ベトナム人胚培養士日本への招聘について
日本での胚培養士不足に対する解決策として「海外からの胚培養士を日本へ」とのことから、東南アジア圏での生殖医療事情について調査を行った。本調査では、東南アジア諸国の生殖医療事情を踏まえ、特にベトナムからの胚培養士招聘の可能性について検討した。

東南アジアにおける生殖医療事情
タイ
タイでは代理母制度が合法であり、生殖医療は高度に発展している。国境付近には代理母を希望する者が多く、海外からの対外受精希望者を積極的に受け入れている状況が見られる。
マレーシア
マレーシアでは、人口増加政策の一環として生殖医療に大きな期待が寄せられている。生殖医療施設も多く存在し、かつては代理母制度も認められていたが、現在は規制が強化されている。国内の70%がイスラム教徒であるため、胚培養士がヒジャブを着用することが多く、培養士節内での作業環境への影響を踏まえると、日本での採用には検討を要する点がある。
シンガポール
シンガポールでは物価および人材費が非常に高く、技術水準は他国と同等であるものの、招聘に伴うコストが高いため、招聘は見送ることとした。
ベトナム
ベトナムでは日本と同じ機器や薬剤が使用されており、胚培養士および胚培養室の運用基準はオーストラリアの影響を強く受けている。同国の施設は非常に高い管理水準を維持しており、日本における規模の大きい胚培養室を要する大手の生殖医療施設の基準と比べても引けを取らない管理がなされている。また、胚培養士としての作業は医療行為とみなされ、指定された学校を卒業しなければ資格が得られない。
ベトナムにおける胚培養士の給与は約400万円程度であり、これは公務員の平均年収(約100~130万円)を大きく上回る。また、医師の年収が約900万円であるのに対し、胚培養士も高額な給与を得ていることが確認された。ベトナムでは1日あたり平均20例の採卵が行われており、日本の胚培養士と比べて作業処理のスピードが非常に速いことが特徴である。
ベトナム人胚培養士招聘の決定
ベトナムでは、規定された学校を卒業後、5〜6年の実務経験を積み、ICSI技術を習得することで一人前の技術者として認められる。ICSI技術の習得前の胚培養士でも、施設内で十分な練習を行っており、日本に招聘すれば迅速にICSI技術を取得できると判断された。また、ベトナム人胚培養士は、職員に対する教育も業務の一環としており、毎日業務終了後に教育時間が設けられている。
この教育時間において、ICSI技術を習得していない胚培養士が真剣に学ぶ姿勢を示し、深夜まで施設に残って研修を受けるという状況が見受けられる。このような現状から、日本国内の胚培養室でICSI技術者の不足が生じている問題は、ベトナム人胚培養士を採用することで解消されると確信している。
ベトナムの労働基準法では週48時間労働が定められており、このことから、長時間の作業に対しても問題が生じることはないと考えられる。また、忙しさが日常であり、特に問題意識も持っていないと判断した。
研修プログラムと招聘の流れ
ベトナム人胚培養士の日本での研修に関して、以下の点について確認が行われた。
- ICSI技術の判定
- 培養室内での言語問題(英語)
- 日本国内で英語での作業が可能か
- ICSI以外の業務能力の確認
これらを確認するため、一般財団法人あかり会が実施する中級試験を行った結果、2名のベトナム人胚培養士が合格した。試験は日本人と同様の内容で、英語で実施された。いずれも大学院卒業の高学歴者であり、英語に問題はなかった。むしろ、日本人胚培養士の語学力向上が必要であることが明らかになった。
ベトナム人胚培養士に対する聞き取り調査では、日本国内での就労が可能であれば地方での勤務にも問題がないとの回答が得られた。彼らはVISA取得に関心が高く、技術者としての入国が可能であれば、日本国内での就業に強い関心を持っていることが確認された。
以上の調査結果から、一般財団法人あかり会は今後も継続してベトナム人胚培養士の招聘活動を行うことを決定した。彼らの高度な技術と勤勉さを活かし、日本における胚培養士不足の解消に貢献することを期待している。