【号外】「システマティックレビューを読むために」:メルマガ
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システマティックレビューを読む際に必ず出てくる統計用語について解説します。
まずはEBMの説明から、Evidenced Based Medicine (EBM)とは、医療行為を可能な限り最良の科学的証拠に基づいて行うということで、医師の主観的な判断から離れ、これまで積み上がった医学的な証拠に基づき最適な医療を提供しようとする試みです。その中で、Cochrane Reportに代表されるシステマティックレビューは、下記に示すようにエビデンスピラミッドの上位に位置します。
(https://cocokura.ncnp.go.jp/evidence/)
ある治療に関して、ケースコントロール試験(後ろ向き調査)により総合的に判断するときの解析においては、特定の統計的な指標に基づき評価されます。その際に用いられるのがオッズ比(Odds ratio: OR)もしくは相対的効果(Relative Effect: RR)と称されるもの、それと信頼区間(Confidence interval; CI)となります。オッズ比は、医療的介在の有無とそれに伴う結果の2群間を過去に遡って検証する方法で、例えば、ヒアルロン酸を用いた精子の選別方法が妊娠という結果に至るかどうかのようなものです。オッズ比が1を超えていてもしくは1を下回っていて、なおかつその95%信頼区間が1を挟んでなければ、その医学的介在は効果があるとみなされます。ここで、信頼区間についてはある数式により自動的に算出される値ですので、ここでの詳細記述は避けます。
また、エビデンスレベルのとても低い(D)〜高い(A)の評価は、おおよそ下記の表のように評価されます。表中CQはClinical Questionの略で、重要臨床課題の構成要素を抽出し、1つの疑問文で表現したものです。一般的に、構成要素を抽出する際には、PICOが用いられます。PICOとは、重要臨床課題の4つの構成要素の頭文字を取って略したものです。具体的な内容は以下の通りです。
- P(Patients、Problem、Population)
介入の対象となる患者の特性(性別や年齢など)
疾患や病態、症状など
特定の地理的条件や施設的要件など - I(Interventions)
Pに対して行うことを推奨するかどうか検討したい介入(検査や治療など)
介入の期間、薬の用量や投与方法などの要素 - C(Controls)
プラセボ(偽薬)、標準治療群など、比較する対照となる医療行為 - O(Outcomes)
介入(検査や治療など)が最も推奨されるか判断するための基準となるアウトカム(生存率、痛みや副作用、入院日数など患者に生じる結果)
PICOであげた構成要素を、「Pにおいて、Iを用いることが、Cと比較して、推奨されるか(例:早期の〇〇がんでは、内視鏡的切除と外科手術のどちらの方法が推奨されるか)」のような1つの文で表現したものがCQです。
(https://minds.jcqhc.or.jp/docs/methods/cpg-development/minds-manual/pdf/all_manual_.pdf)
以上、システマティックレビューを読む際に知っておいたほうがいい統計手法について数式を用いないで説明しました。
また、ここまで原則論を述べてきましたが、個人的に感じることは、システマティックレビューは試験された対象患者全体に対しての統計的な解釈であり、そのエビデンスレベルが低いからと言って目の前の個別患者に対して全く効果はないのかと問われれば、不明ということになります。なので、オッズ比が1よりも大きいもしくは小さい場合、その処置が患者に対して不利益でなければ、その治療法を適用することにより望む結果が得られる可能性はあるといことです。
何か皆さんのお役に立てれば幸いです。
胚培養士実力認定会
事務局